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テレビドラマ『1970ぼくたちの青春』すべてが嘘に思われたあの頃

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作品概要

『1970ぼくたちの青春』は、1991年6月にフジテレビ系列で放映された、愛知県豊橋市を舞台にしたテレビドラマです。

脚本は松原敏春さんが担っています。

なお音楽監修は、元オフコースの鈴木康博さんによります。

登場人物

西脇  誠
(18・ノンポリ)    吉岡 秀隆
浅井 恵子
(18・ブンガク)    川越 美和
中山ミドリ
(18・ミドリ)     石田ひかり
金山  仁
(18・バンチョウ)   筒井 道隆
北川 昌之
(18・リクソウ)    萩原 聖人
林  和夫
(18・ニシキ)     永堀 剛敏
寺沢 智明
(29・マムシ)     陣内 孝則

『ドラマ 七月号』 通巻第145号 映人社 1991年7月1日発行 P115

 西脇  誠(38)     風間 杜夫

 林  和夫(38)     段田 安則

あらすじ

車で渋滞する大晦日の夜の東名高速、西脇誠は妻と娘を伴い、生まれ育った愛知県豊橋市を目指します。

この度の帰省で西脇誠は、高校のクラス会への参加を予定しています。

インターチェンジでの小休止の時西脇誠は、懐に忍ばせていた、かつての友人、金山仁からの手紙を読み返します。

そこにはビザがおりなくて入国できず、旧友との再会が叶わないことを惜しむ金山仁の言葉が綴られていました。

西脇誠は、遠い高校の頃の記憶を思い起こします。

1969年大晦日の夜の豊川稲荷、高校三年の西脇誠は、地元でも特にカルイ女子で有名なミドリと初詣に来ています。

当時の彼のあだ名はノンポリ、県下では一応名の通った進学校に通っている酒屋の次男坊です。

ノンポリは今夜こそミドリと関係を持って童貞を捨てようと目論んでいます。

ノンポリはミドリの手を引いて参列を離れ、物陰でミドリを無理やり押し倒そうとします。

その時、地元の工業高校の連中と喧嘩の最中だった、金山仁、北川昌之、林和夫と出くわし、気が付くとノンポリも喧嘩に巻き込まれてボコボコに殴られ、こうして彼の1970年は幕開けたのでした。

高校時代、ノンポリと金山仁、北川昌之、林和夫の四人はいつも仲間でした。

金山仁は通称バンチョウ、家は時計屋で、ケンカの強さは天下一品であることからこう呼ばれています。

北川昌之はリクソウ、内緒で新車を東京まで運転して運ぶアルバイトをしていて、仲間の中で唯一性体験があります。

そして林和夫はニシキ、米屋の倅で片足が少しだけ不自由です。

年明けの深夜の道をリクソウが運転する車に箱乗りするノンポリ、バンチョウ、ニシキ、やがて彼等は明け方の伊良湖岬に辿り着きます。

水平線から初日の出が昇ってくると、四人は拝みます。

そしてバンチョウが懐からライターと煙草を取り出します。バンチョウのつけた火が風で揺れると、四人の七つの手がライターの火をとり囲みます。

そして一同くわえタバコの先端をその火に近づけ、大きく吸い込みます。

やがて出し抜けにバンチョウが、ブンガクのことが好きだと言い出します。

それを聞いたノンポリ、リクソウ、ニシキは吹き出します。

ブンガクとは、彼等と同じクラスの高嶺の花的存在の女子で、名前を浅井恵子と言い、予備校教師の娘で文学好きなことからそう呼ばれています。

一同はバンチョウに止めておけと言います。しかしバンチョウは譲りません。

そしてノンポリに、自分の代わりにラブレターを書くよう言い、ノンポリがそれに渋々承諾したその時、彼等の前にマムシが現れます。

マムシとは、彼等のクラス担任の歴史教師の寺沢のことで、しかも補導係です。

手にしていた煙草を隠し切れなかったニシキは、マムシによって二週間の停学処分に処せられたのでした。

ノンポリはバンチョウから頼まれたラブレターの執筆に苦戦します、相手は美人で聡明で、文学好きで知られるブンガク、並のラブレターでは心に響かないと考えたノンポリは、日本と世界の文学作品の名言を引用することにします。

ある夜のこと、バイト帰りのリクソウが駅前を歩いていると、ブンガクがマムシと二人で、泊りがけでスキーに行こうとしている場面に遭遇します。

それを聞いたニシキは、オレ達もスキーに行こうと提案します。

たまたまリクソウが明くる夜、四人の行きつけの定食屋の、三十半ばの夫も子供も居る女性と二人でスキーに行く予定だったので、それに便乗しようと言うのです。

彼等四人はマムシにいつも酷い目に合されていました。そこで教え子との寝泊りスキー旅行の現場を押さえ、マムシの弱みを握ろうとしたのでした。

リクソウは彼等が便乗するのを渋々同意します。

しかしバンチョウは行くことを頑なに拒みます。愛するブンガクが、よりによって担任教師のマムシと泊りがけでスキーに行ったということを、決して認めたくなかったのでした。

スキーを担いで駅に向かうノンポリ、リクソウ、ニシキ。

しかし駅前の電話ボックスでミドリを見かけると、それを見たリクソウはチャンスとばかりにミドリに近寄り飲みに誘います。

居酒屋で盛り上がっているミドリとリクソウ。しかしニシキはノンポリに俺帰ると言います。

ノンポリはニシキが可哀想に思います。

そして同時に、寒空の下で、来ることのない高校生男子を待っているであろう定食屋の女性を思い哀れに感じます。

酔いつぶれたミドリを、リクソウとノンポリがスキー板をタンカー代わりにして運びます。

彼等が着いた場所は母校の小学校の運動具置き場。

リクソウに促され、ノンポリはまず先にミドリと関係を持とうとします。

しかし今日は生理だからという理由で拒まれ、そこから押し切れなかったノンポリは、用具置き場から出てきます。

続いて入っていくリクソウ。

ノンポリは、リクソウもやはり自分と同じ理由で拒まれるだろうと思っていました。

しかしリクソウは、なかなか中から出てきません。

ノンポリが躊躇いながらも中を覗くと、暗がりの中、身体を重ね合うリクソウとミドリの姿がありました。

ノンポリは自らの動揺を冷ますかのように、ポケットから英単語集を取り出し読み始めます。

数日後、まさかと思っていたことが起こります。

ブンガクからラブレターの返事が来たのです。

バンチョウから返事を書くよう要求されたノンポリは仕方なく書きます。

こうして、文学作品を引用して心情を綴り合う何通もの手紙が、ブンガクとバンチョウの家を行き来するようになります。

ブンガクの手紙は、自身の中に渦巻いているものを引用に重ねはじめ、それは次第にエスカレートしていきます。

ノンポリは、物静かな印象の外観からは想像もつかない、ブンガクの内面の深淵を覗いた気がして恐ろしさを感じます。

と同時に、いつしか本当にブンガクに恋心を抱くようになります。

いわばバンチョウのラブレターのゴーストライターという立場でしたが、ブンガクの気持ちを確かめたくなったノンポリは、ブンガクにラブレターのことをどう思っているか聞いてしまいます。

そしてどういう経緯からか、そのことがバンチョウの耳に入り、ノンポリはバンチョウから殴られます。

ノンポリはバンチョウに、お前の代わりに聞いてやったんだぞと言い訳するも、軽率な行動だったと少し反省します。

後日ノンポリのお膳立てで、バンチョウはブンガクとデートする機会を得ます。

しかしバンチョウは緊張のあまりブンガクに話すことすらままならず、デートは惨憺たる結果で終わります。

それを聞いたノンポリ、リクソウ、ニシキは腹を抱えて笑います。

ある日のこと、彼等の通う高校の新聞部が、マムシとブンガクが交際しているというビラを掲示板に張り出したことから、ブンガクは高校で孤立し始めます。

ブンガクのことを心配するバンチョウは、ノンポリを伴ってブンガクの家の前に張り込みます。

やがて中からブンガクが飛び出してきて暗い夜道の中、自転車を走らせます。

バンチョウとノンポリは、慌ててブンガクの後を負います。

たどり着いた先は、マムシのアパートでした。

バンチョウとノンポリは、物陰からマムシの部屋の窓を見つめます。

やがてブンガクが飛び出してきます。

ブンガクの目には涙が流れています。

追って出てくるマムシの手を払い除け、ブンガクは去って行きます。

ノンポリにはブンガクが、やけに大人びて映ります。

ある夜、駅前の本屋で参考書の立ち読みをし終えたノンポリが街を歩いていると、リクソウとミドリが親しげに歩いている姿を目にします。

ミドリがリクソウとバイバイの挨拶を終えて歩き始めた時、ノンポリの存在に気づきます。

路面電車までの夜道を、並んで歩くノンポリとミドリ。

リクソウとの出会いが自分を変えてくれたことを嬉しそうに語るミドリ。

ノンポリは、ミドリが一途にリクソウを愛し始めていることを知ります。

そして、そんなミドリがノンポリには幸せに包まれてキラキラ輝いて見え美しいと感じ、リクソウを羨ましく思います。

ある日のこと、ニシキが工業高校の不良グループに襲われます。

そのヘッドである勝又がミドリの元彼氏で、ミドリへの思いを断ち切れずにいたのです。

仲間のリクソウに話しがあると言っておけ、勝又とその仲間はニシキにそう言い捨て去って行きます。

それを知ったバンチョウは、リクソウにミドリと別れるよう忠告します。勝又の次のターゲットがリクソウであることは明らかでした。

しかしリクソウは応じません。

リクソウもミドリを真剣に愛し始めていたのです。

リクソウの硬い気持ちを悟ったバンチョウは、単身勝又のところに乗り込み、リクソウに手出ししない約束を取り付けます。

しかしそれは条件付きでした。

条件とは、バンチョウと勝又がサシでやり合い、その場にリクソウとミドリが立ち合う、そしてもしバンチョウが負けたらバンチョウはこの件から一切手を引く、というものでした。

バンチョウの優しさに心打たれるノンポリ。

ポケットから煙草を取り出し皆に勧めるニシキ。

ノンポリが一本抜き取ると、躊躇っていたバンチョウとリクソウも一本づつ抜き取ります。

そして彼等は、元日の朝、伊良湖畔でしたのと同じように、風を遮るように各々の手でライターの火を囲み、順に付け、一同大きく吸って煙を吐き出します。

ぎこちない笑みが四人に溢れたその時、またしてもマムシが現れます。

万事休すの四人、しかしマムシの口から出た言葉は以外なものでした。

「明日の朝釣りに行く、お前等も行かねえか…」

翌朝、釣り船でのマムシとノンポリ、バンチョウ、リクソウ、ニシキ。

マムシは四人に、新聞部に書かれたことで俺のこと馬鹿にしてんだろと自嘲的に言います。

四人はそれを否定します。

そしてマムシはぽつりバンチョウに、面倒なことは起こすなよと言い添えます。

バンチョウは「ハイ」とだけ答えます。

決戦を目前に控えたある日、リクソウの部屋にノンポリとミドリが来ています。

今回の決戦では、ノンポリとミドリが立ち合うことが勝又の出した条件、しかしノンポリはミドリに現地に行くなと言います。

しかしミドリはリクソウだけ行かせる訳にはいかないと言います。

リクソウもミドリに来るなと言います。しかしやはりミドリは応じません。

ノンポリは二人が深い愛情で結びついていることを悟ります。そして、二人とも来るな、バンチョウには俺から話す、と言います。

ノンポリはマムシのところに行き、仲裁を願い出ます。

マムシは、お前が俺に仲裁の相談に来たことを金山(バンチョウ)と北川(リクソウ)は知ってるのか、と聞きます。

ノンポリは彼等は知らないと答えます。

それを聞いたマムシは、俺には止められない、金山も北川も工業高校の何とかという奴も、人の力を借りずに自分の手で何とかしようとしている、痛みは伴うだろうが俺には止められない、と言います。

決戦は互いに大きな傷を負いながらも、バンチョウが勝利します。しかしその場に来るはずだったリクソウとミドリの姿がありません。

バンチョウは怒りに震えます。

バンチョウはリクソウを呼び出し激しく殴ります。

リクソウはされるがままでいます。

そこへミドリが駆けつけ、私が彼を行かせなかったのよ、悪いのは私でしょ、殴るなら私を殴りなさいよ、と叫びます。

リクソウは、女は黙ってろと言ってミドリを退けると、慣れない手付きでバンチョウを殴ります。

何度も何度も殴ります。

されるがままのバンチョウの口が血で赤く染まります。

見ていたミドリも、そしてノンポリもニシキも皆泣き出します。

泣きながらノンポリは、殴っているリクソウの痛みも、殴られているバンチョウの痛みも悟ります。

リクソウが亡くなったのは、その数日後のことでした。

高校生活最後の陸送のアルバイトの最中、事故に遭い命を落としたのです。

深い悲しみの中、リクソウの葬儀が行われます。

リクソウの親族、そしてノンポリ、バンチョウ、ニシキ、ミドリも来ています。

火葬が終わるまでの暫くのあいだ、ノンポリとバンチョウとニシキは豊川の川辺に佇みます。

川面を見つめながらバンチョウが、実は自分が朝鮮人であること、そして卒業式を待たずに祖国の北朝鮮に帰る決意したことを告白します。

北朝鮮に行けば二度と会えなくなる可能性があることを知るノンポリは、考えを改めるようバンチョウに要求します。

しかしバンチョウの決意は硬いものでした。

火葬が終わり、家族から順番にリクソウのお骨を拾う時が来ます。

その順番がノンポリ達三人に巡ってきた時、そばに居た火葬場の年配職員が、オチンチンの骨どれかわかるかと聞いてきます。

三人の顔から笑みがこぼれます。

そしてその職員に教えてもらい、ノンポリはオチンチンの骨を箸で摘まみ上げます。

ノンポリの顔から笑みが消え、やがてその骨を見つめる目から涙が溢れ出します。

それは、儚く短かったリクソウの人生を象徴しているような、短く小さな骨でした。

卒業式当日、式の後の最後のホームルームでマムシが教壇に立ちます。

リクソウの机の上には花が手向けられ、バンチョウの机は埃を被っています。

生徒達の前でマムシは贈る言葉として、文学作品の一節を引用し、困難に立ち向かうことの大切さを伝えます。

そして最後に「ただし死ぬなよ、生きてろ」、そう言い残し教室を後にします。

高校生活最後の下校の時、校門までの道をノンポリとニシキが並んで歩いています。

そして二人はブンガクの姿に気付きます。

ノンポリはニシキに促されブンガクの側に来ます。

ブンガクはノンポリに、近々結婚すること、相手は父親の知り合いの三十代の薬局店経営者であること、バンチョウのラブレターの筆者がノンポリであったことを、実は最初から気付いていたこと、そしてノンポリが自らそのことを打ち明けてくれるのをずっと心待ちにしていたことを告げ、去っていきます。

自転車を漕ぎながら校門を出て行くブンガクの白い脚が、ノンポリの目に焼き付きます。

山脇誠が母校の体育館で行われている同窓会に出席しています。

そこに、ニシキやブンガクの姿は見つけられません、しかしそこには確かにかつての顔があったことを山脇誠は確認します。

やがて山脇誠は会場をそっと抜け出し、夕暮れの校庭に佇みます。

すると向こうのほうから、足を引きずった見慣れた歩き方の男の姿を見つけます。

「ニシキ」

山脇誠が咄嗟に声を張上げます。

「ノンポリ、久しぶり」

林和夫がすぐに答え、山脇誠の側に来ます。

そしてポケットから煙草を取り出して一本口にすると、もう一本を山脇誠に勧めます。ライターを持つ林和夫の手を三つの掌が風よけし、二人同時に煙草に火をつけます。

そしてお互い大きく吸い込むと、二人は自然に微笑み合います。

「ちょっと顔出してくる」

そう言って体育館へと駆け出す林和夫。

山脇誠はそんな彼の後ろ姿を見つめながら、金山仁の手紙の言葉を思い返します。

「ボクは今、国家建設の為に頑張っている。みんなによろしく伝えてくれ。会いたい。君達に会いたい」

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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • ストーリーをあげてくださってありがとうございます。昔一度見たきりなのにとても印象に残っていたドラマです。
    最近になってこのドラマのことを思い出して、時々検索してみたりしていました。
    このブログを読んで、酸っぱい想いが蘇りました。

  • Miezo様、コメント拝読致しました。
    お返しが大変遅くなり申し訳ありません。
    『1970ぼくたちの青春』良いですよね!
    本記事が、Miezo様が『1970ぼくたちの青春』を思い起こす一助となれば、幸いに存じます。
    私もまた久しぶりに、本作品にふれてみたいと思います。
    コメントありがとうございました。

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